前回の続き。
同じスラムで育った友人、スラ友のH氏との五反田探検の続きだ。
翡翠博物館を出ると、
我々の目の前にはミャンマー大使館があった。
そして看板にはミャンマー語で何か書かれている。
H 「あ、ミャンマー大使館だ!
俺の同僚で英語も話せないし、
日本語もおぼつかないが、
ミャンマー語だけできる人がいる。
以前彼がこの文字を見て、
ミャンマー大使館と解読してくれた。
俺もミャンマー語習おうかな」
私 「ああ、ミャンマー語は大事だな。
ふいにミャンマー大使館が現れても
とっさに対応できる」
その後はまたぐだぐだと歩き始めた。
暑かったので友人のH氏はミルクティーを、
私は水を買った。
友人はミルクティーをおいしそうに飲み始めた。
私 「そのミルクティー、
砂糖の含有量は小さじ12杯分ぐらいだ。
そしてそれは心筋梗塞のリスクを・・・」
H 「待て、なぜそれを今言った?」
私 「いや、必要な情報かなと思って」
友人は不動産関連の仕事をしていた。
私 「奇遇だな、私も自称1級不動産鑑定士だ。
不動産のことなら何でも聞いてくれ」
H 「ああ、じゃあ自称専門家から見て
あの建物はどう思う?」
私 「うん、家だな」
H 「えっ、終わり?」
私 「プロならそれで通じる」
H 「建築用語でツー・バイ・フォーというのがあるよ。
2インチ×4インチの骨組みを組み合わせる工法なんだ」
私 「私もそういうのを知っている。
コンポジション・シー・フォーってやつだ」
H 「それは一体何?」
私 「プラスチック爆弾だ。
スプーン1杯で乗用車ぐらいなら軽く吹き飛ばせる。
家の爆破処理に使ってくれ」
H 「取り寄せなきゃな」
H 「クレーム担当なので、日々散々な思いをしている」
私 「今年に入ってからの三大クレームって何だろう?」
H 「そうだな・・・1つ目は、
空き地で子ども達がボール遊びをしていてうるさい
というクレームがあった。
なので、『ここでボールで遊ぶのは禁止』
という看板を立てた」
私 「効き目はあった?」
H 「ボールでボッコボッコにしてあった」
私 「子ども達からの警告だな。
遊ばれているのはボールではなく、
お前達なのだという」
私 「他にはひどいクレームはあった?」
H 「もういくらでも。
昨日は『タンポポの綿毛が私に飛んでくる!』
ってクレームがあった。
仕方なくタンポポを引き抜いてきた」
私 「真っ昼間にスーツ姿でタンポポを摘んでいたわけか。
凄まじい不審者感だな・・・」
私 「3つ目は何だろうか?」
H 「7階からパンを落として鳩に餌をやるおばさんがいた。
同僚達との間では、春のパン祭りと呼ばれている」
私 「とんだパン祭りだな」
しばらく歩いていると、
「この先ザ・フォレスト」という看板があった。
H 「とりあえず定冠詞つけときゃいいだろ的な投げやりさを感じる」
私 「これは惹かれるものがあるな。
行ってみよう」
しかし、行けども行けどもザ・フォレストは現れない。
H 「見当たらないがここはフォレストなのか?」
私 「むしろもう我々がフォレストなのかもしれん」
しかし、そのあと少し行くとザ・フォレストにたどり着いた。
H 「森だな・・・」
私 「ああ、ただの森だ」
ザ・フォレストには2つのルートがあった。
そのまま地上を進むルートと、
高台から森を見下ろせるルートだ。
友人はそのまま地上から行くルートを進もうとした。
私 「待て、あの茂みにゲリラがいるような気がする。
まずは高台から状況を確認しよう」
H 「お前もベトナム帰りなのか?」
しばらく森を楽しんだ後は、また五反田を散策した。
しかし、また翡翠博物館に戻ってきてしまった。
私 「まだザ・フォレストなのかもしれない」
H 「ここは迷いの森だ」
その後、なんとかザ・フォレストを脱出できた。
しばらく歩いていると教会にたどり着いた。
H 「ちょっと礼拝していこうか」
私 「ああ、そうしよう。
救われたい。
進むべき道を示して欲しい」
我々は教会の扉を開けようとした。
しかし、扉は堅く閉ざされていた。
H 「神様、ダメだってよ」
私 「我らに救済はないのか」
こうして迷える子羊達は
再び人生の迷いの森へと戻っていった。