だいたい日刊 覇権村

実益のないことしか書かない 毎日21時更新予定

翡翠博物館

先日、同じスラムで育った友人、スラ友のH氏と徘徊の会を開いた。

徘徊の会、略して徘会とは、

その名の通り町中をうろうろと徘徊し、

警察に職質されるという会だ。

今日は東京のメジャーな場所を徘徊しようということになった。

 

さて、東京でメジャーな場所というと、

皆さんはどこを思い浮かべるだろう?

新江古田だろうか、それとも南阿佐ヶ谷だろうか?

でも東京といえば、やはりなんといっても五反田だろう。

というわけで五反田を徘徊した。

 

H 「目黒川の川岸の桜並木がとても綺麗らしい。

まずはそこを見に行ってみよう」

私 「そうしよう」

 

目黒川に到着した。

私 「散ってるな・・・」

H 「そうだな・・・」

桜と関わると本当にろくなことにならない。

 

桜がだめだったので、昔話に花を咲かせた。

私 「やはり昔のことは楽しい思い出ばかりだな」

H 「本当にそうだね!

学芸会の前日にぶっだに骨折られた話とかね!」

私 「その件は本当にすまなかった・・・。

あの頃はまだ悟りに到達していなかった」

 

その後もあれこれくだらないことを話しながら歩いた。

しかし突然、友人は街中で銃声を聞いてしまったベトナム帰還兵みたいな顔色になった。

私 「一体どうした?」

H 「いま、前の職場の上司とすれ違った・・・

奴には本当にパワハラに苦しめられたんだ。

こんな所で出くわすなんて・・・」

私 「そんなことあるんだな。

天文学的な確率だ」

友人は本当にテンションがガタ落ちして、

いよいよもってベトナム帰り感が満ちあふれた。

 

友人のテンションを上げるため、

我々は翡翠(ひすい)博物館に入った。

館内では係の人が丁寧に解説してくれた。

係員 「翡翠糸魚川でよく取れます。

ここにある3トンの翡翠も館長が取ってきました。

ただ、今は国有地なので勝手に取ったら盗掘になります」

私 「盗掘・・・ロマンを感じる言葉だ」

 

館内には翡翠で作られた洗面台もあった。

H 「この洗面台ならぶっだも満足じゃないか?」

私 「いや、苔も欲しいな」

H 「翡翠の苔はないなぁ」

 

館内の池には何故かカエルが飼われており、

ずっとケロケロと鳴き声が聞こえていた。

私 「なぜカエルなんだろう・・・ 」

係員 「館長の趣味で飼育されております」

H 「館長とは一体」

 

また、館内には何故か土器や、

アクアマリンやオパールといった他の宝石も展示されていた。

H 「なぜ土器なんだ・・・」

係員 「館長はもともと考古学をやっておりました。

しかし、様々な宝石が出土するので、

鉱物全般に興味を抱くようになったのです」

私 「館長、多彩だなぁ」

 

翡翠の勾玉も展示されていた。

係員 「翡翠はかたいので加工が非常に難しいです。

なのでこの勾玉は館長がダイヤモンドカッターを使って削り出しました」

H 「館長ハンパない」

私 「一体何者なんだ」

 

また、翡翠カワセミとも読むことを知った。

カワセミとは、あの青い美しい鳥のことだ。

翡翠と書いて、ヒスイともカワセミとも読めるらしい。

私 「私も翡翠と書いて(ぶっだ)と呼ばれるぐらいになりたいものだ」

H 「磨き上げなきゃな」

 

係員 「翡翠は先日、日本の国石に認定されました」

私 「私も石になりたい」

H 「マジか、今度相談乗るよ?」

 

そんなこんなで展示を全て見終えた。

私 「何が一番良かった?」

H 「オパールだな」

私 「翡翠全然関係ないじゃないか・・・」

H 「そういうぶっだは何が一番良かった?」

私 「カエルかな」

 

翡翠博物館が思いのほか面白かったので、

我々はとてもテンションが上がった。

私 「めっさ楽しかったな!」

H 「そうだな、最高だった!」

私 「さっきは上司に会ったな!」

H 「思い出させないでくれ・・・」

友人の心は再びベトナムの密林へと帰っていった。