体がカルボナーラを求めている。
そう気づいたのは夕方だった。
「顧客のニーズをつかむのが大事」
みたいな記事を読み、
まずは最も身近な顧客である
自分という存在のニーズを
確かめようと思った。
そして自己との対話で、
気づかされた。
せっかくなので本格的に作ろう。
顧客は完璧なカルボナーラを求めている。
品質への飽くなきこだわりは、
プロとして必須である。
私はスーパーでいつもより
ちょっと豪華な材料を買った。
顧客はおいしいカルボナーラの
ためならいくらでも払うと言っている。
にんにくはわざわざ国産のものを買った。
オリーブオイルとにんにくを
良い感じに炒めた。
顧客は物欲しげにそれを眺めている。
ベーコンもいい感じの
ブロックベーコンだ。
これを贅沢に厚切りにしていく。
顧客はそれを見てだらだらと
よだれをたらし始めた。
そしてベーコンに焼き色をつけ、
豆乳と濃厚チーズを入れて
念入りに火を通す。
顧客はもう我慢できないといった様子だ。
よし、ここらへんで
ソースはでき
あっ・・・(パスタを切らしていることに気づく)
顧客に絶望の表情が浮かぶ。
さ、気を取り直して、
つづきはカップヌードルの
作り方だったね。
カップヌードルの料理法は簡単。
お湯を注いで3分待つだけ!
顧客は出されたものを黙って食え。
つべこべ抜かすな。
嫌なら食うな。
カルボナーラは明日食わせてやる。
それまで我慢しろ。
これがビジネスだ。