前回のつづき
そろそろ秩父は飽きてきただろうか?
だとしたら申し訳ないことをした。
お詫びに、当初の予定を短縮して、
切り上げようと思う。
それでは、迎え酒ならぬ
我々はチャーターした牛車を乗り捨て、
鉄道に乗ることにした。
げにすばらしきは文明の利器なり。
駅には古代の有名な銅銭 和同開珎の
モニュメントがあった。
思わず写真を撮って、
経済学科の友人にメールで送った。
私 「貨幣だよ!」
返信が来た。
友 「貨幣だな...」
貨幣だった。
ちなみにここら一帯の流通貨幣も和同開珎だ。
支払いは和同開珎で済ませて欲しい。
また、ここらへんには
そもそも電気文明が到達していない。
ICカードなんかに頼らず、
紙の切符を買ってほしい。
鉄道も電車ではなく、蒸気機関車だ。
そんなわけで我々は秩父鉄道に乗り込んだ。
秩父鉄道には、
御花畑駅というのがあった。
まるで私の頭の中を具現化したような駅だ。
その由来はこれだ。
芝桜にされた市民達の成れの果てだ。
春になればたくさんの市民達が咲き乱れ、
観光客を楽しませる。
駅にはこんなものがあった。
鉄道むすめというらしい。
各鉄道にそれぞれ違ったキャラがいるそうだ。
私が注目したのはこちらのお嬢さんだ。
圧倒的存在感がある。
思わず応援したくなるキャラクターだ。
さて、正面からの景色を見たかったので、
我々は先頭車両へ向かった。
するとそこには
「走行中は運転士に話しかけないでください」
という注意書きがあった。
「ねーねー、運転うまいね。
どこ住んでるの?
メールアドレス交換しない?」
と声をかける客が相次いだからだろう。
運転士も大変だ。
我々は流れていく景色をぼんやり眺めた。
友 「あ、学校がある。
こういう所の学校の校歌って
どんな感じなんだろうな」
私 「おお、山!川!自然!みたいな感じだろう」
私 「お、園児達が何やら円陣を組んでいる」
友 「きっと降霊術だろう」
私 「あの緑色の服の子が犠牲になるんだな」
また、近くのセメント工場へと
資材を運ぶ貨物列車が走っていた。
友 「通勤ラッシュより乗り心地良さそう」
私 「人間はセメント以下か・・・」
さて、ここらへんには山が多い。
そしてトンネルもたくさんあった。
それを見て、私は良い小説を思いついた。
トンネルを抜けると、そこは山だった。
次のトンネルを抜けると、そこも山だった。
その次のトンネルの先も山。
次も山。山、山、山。
タイトルは山国。
ペンネームは山端康成でいこう。
次のノーベル賞は私がもらった。
つづく