以前、私は時間短縮料理を編み出した。
本日のシェフの気だるげカプレーゼである。
チーズを切るのが気だるい。
トマトを切るのが気だるい。
もう切らずに一緒にしとけばよくね?
というコンセプトで作られた一品だ。
まったく、発明というのは、
偶然と怠惰の賜物である。
しかし、おかげさまで、
考え得る限りの効率化と
省エネ化が進んだ。
調理時間は5秒ほどである。
これ以上の手抜きはできまい。
そう思われた。
しかし、シェフの気だるさは、
とどまるところを知らない。
もっと手を抜きたい。
もっと楽をしたい。
もう何もしたくない。
そうした渇望が、
さらなる技術革新と
産業革命を起こした。
見てほしい、これがその答えだ。
効率化と合理化を限界まで
押し進めたカプレーゼである。
調理方法は簡単。
片手にトマトをつかみ、
片手にモッツァレラをつかむ。
そして、両手を皿の上でクロスし、
そのままそっと手を開くだけ。
調理時間は2秒。
そこには全てがある。
料理という過程の限界到達点。
料理の究極の形がそこにあるのだ。