今日は駅前で、誰かを待っているおじさんを見た。
一体誰を待っているのだろう?
妻だろうか、子供だろうか、友人だろうか。
わからない。
もしかしたら誰とも待ち合わせの約束などしていないのかもしれない。
家族もなく、友人もなく、家にいるのもいたたまれない。
そしておじさんは町へと繰り出す。
そして待つのだ。
自分を訪れる誰かを信じて。
まだ見ぬ誰かが現れるのを願って。
こうしておじさんは待ち続け、時は過ぎ去っていく。
そしてある冬の寒い日。
その日はこの冬一番の冷え込みであった。
ふと空を見上げると、視界をよぎる物があった。
雪だ!雪が降ってきたのだ。
町を白く美しく染め上げる雪。
そんな美しい光景を見ていると、次第に意識がうすれていった。
そして舞い散る雪の中で、おじさんは息を引き取ったのだ。
しかし、話はここで終わりではない。
人々は見ていたのだ、待ち続けるおじさんの姿を。
人々は記憶したのだ、何かを待つおじさんの生き様を。
そして人々は、忠犬ハチ公的な意味合いをこめて、待ち続けるおじさんの像を立てたのであった。
今ではその像は人々の待ち合わせ場所になっている。
そして多くの人がおじさんを訪れる。
その時、おじさんの像は笑っているように見えるという。